ビジョンを持ったマネージャーづくりから、全員がビジョンを語り合う組織は生まれる

近年、企業の理念浸透や意識改革をする際に、必ずといってよいほど相談を受けるのが、「どうすれば30代〜50代のマネジメントに関わる方の視座や意識、価値観が変えられるのか?」ということ。

この世代の方々は、多少の理不尽さなど気にもせず、目の前に現れる目標に向かってがむしゃらに働き続けることで、企業成長に貢献し、今の会社の礎を築いてくれた世代です。

しかし同時に、右肩上がりの景況感のもと、仕事の量と結果が比例し、前年度よりも高い目標数値を掲げ、努力し達成することで、会社や社会全体が上手く回る時代を過ごしてきた世代でもあります。

現在のような世の中にモノが溢れる社会では、仕事は量から質へ、さらに意味や意義へ相対的な価値の重心が移行しつつあります。その中で改めて、そもそも自分達がどのような価値観を大切にし、働くことを通じて、世の中や自分の周りの人たちにどのような価値提供ができるかが問われるようになってきました。

一方で現在のマネジメント層の方々は、これまで自らのビジョンや人生における価値観を仕事の中で考えるような機会はほとんどなく、教えられたこともないのが現実です。

採用面接時には多少、自らのビジョンを聞かれたこともあったかもしれませんが、入社後の現場やマネジメントの中で、上司、部下、同期と、自らのビジョンに関する話題が会話に上ったことはほとんどないないでしょう。

多様な可能性があるからこそ、企業や国家が明確な指針を示すことが難しい現代社会では、いち組織としての価値観や方向性を示すような大きなベクトルは、あくまで最低限のガイドにすぎません。

組織のベクトルを実社会に合わせて実装させ、真の価値創造をしていくためには、そこで働く一人ひとりのビジョンとの掛け算が必要です。

さらに企業理念への共感を重視する「理念採用」が急速に広まり、組織の理念と自らのビジョンを重ねながら入社をしてきた新しい世代に対し、「考える機会がなかった」「そういう時代ではなかった」という理由は通用しません

不確定な時代に生まれ、ビジョンと独自の価値観を問われてきた新しい世代と、自らのビジョンや価値観を語れないマネジメント層のギャップは、どの組織でも表出し始めています。

今回は、このような課題の解決につながる上、マネージャーが自らのビジョンを持ち、メンバーとビジョンをベースに会社と個の紐付けができるような組織づくりの最初の一歩となる「ビジョナリーマネージャー」育成について、ご紹介します。

企業理念を絵に描いた餅にするのではなく、文化にするまでお手伝いをし、社内外へのブランディング活動を多くの企業の方と試行錯誤しながら一緒につくりあげてきたパラドックスが、最近取り組んでいるインナーブランディングのプログラムです。

マネージャー層を起点に企業をより盛り上げていくために、実施していただきたいこの研修。詳しくご説明しますので、ぜひ最後までご覧ください。

1:ビジョナリーマネージャーとは

「visionary」には「明確なビジョンを持った」という意味があります。つまりビジョナリーマネージャー(Visionary Manager)の英語を直訳すると、明確なビジョンを持ったマネージャーということになります。

企業における実際のビジョナリーマネージャーとは、もう少し具体的に説明できます。ここにおける「ビジョン」とは、企業のビジョンと自らのビジョンのこと。どちらかだけではいけません。

本来マネージャーは、メンバーを管理するだけではなく、“自ら企業理念を体現し、メンバーを育てる”役割を持つと、私たちは考えます。しかし多くの場合は単に役職として、もしくはメンバーを管理するだけの役割のことを「マネージャー」と呼ぶことが多いため、私たちは組織と個のビジョンの掛け算を体現するマネージャーを、ビジョナリーマネージャーと呼びます

私たちが考えるビジョナリーマネージャーとは、例えば以下のような人物です。

・自らの ビジョン(志)を原動力に、常にイキイキしている
・会社や組織のビジョン(理念)に心から共感し、体現している
・周囲の人々が、ポジション、社内外問わず、自然と惹きつけられる
・数値目標やスキル・ノウハウだけでなく、ビジョン(志)から会話を始める

最もわかりやすいビジョナリーマネージャーは、経営者ともいえるでしょう。しかし経営者が企業理念を説き体現するだけでは、一般のメンバーまで理念浸透はしづらいもの。組織のサイズにも限界があります。メンバーと直接関わるマネージャーが理念を体現する人材になることができれば、メンバーにも理念を浸透させ、理念経営を実現することができます

組織を変化させるスイッチであり、エンジンにもなるのは、中間層にいるマネージャーなのです。よく「中間層」というと、組織の中で上司と部下の板挟みになることが役割かのように言われますが、それは組織の最も大きな人的資源の無駄遣いに他なりません。組織を縦横無尽につなげ、未来に向けた変化のエンジンとなる「中核層」になることが本来の役目なのです。

2:“個”と“組織”を自律自走させる「ビジョナリーマネージャー研修」

ビジョナリーマネージャーが理念経営の要となるにも関わらず、現在多くの企業では、マネージャーになると日々の業務に忙殺されがち。研修を実施してもマネジメントスキルばかりを高める研修が多く、業務に追われる中で、自らの成長や理念への理解を深める余裕はない状態です。

しかし、ビジョナリーマネージャーとして理念を体現するには、まず自らの志(理念)や成長について考え、言語化することが重要。その上で会社と自分の理念の共通点を見出し、共感を深めていくことが必要なのです。

ビジョナリーマネージャー育成のためには、2つの自走が必要です。仕組みといっても良いかも知れません。「個の自律自走」と「組織の自律自走」です。

「個の自律自走」とは、マネージャー自身が、「学び→実践→内省→改善→学び→……」を繰り返すことで、企業理念への理解と共感、メンバーに対する教育について、自ら成長していくサイクルです。

「組織の自律自走」とは、マネージャーが率いるチーム全体のことを指します。ビジョナリーマネージャー研修では、企業理念に基づいた、日々の業務におけるマネジメントの在り方や活かし方を学んでもらいます。

まずは日々の関わりから信頼を強め、チームを心理的安全性の高い組織へと導きます。すると失敗に対する不安感が弱まり、業務における目標をより高く、マネージャーもメンバーもワクワクするものに設定できます。

目標を達成することがモチベーションとなれば、マネージャーによるサポートもしやすく、目標から逆算した明確な道筋を計画することができます。自ら楽しめる目標を設定し、そのための計画にも納得感があれば、改善のためのフィードバックは受け入れやすくなります。

これらのサイクルを通して、マネージャーとメンバーから成る組織が自律自走できるようになるのです。

▼「心理的安全性」について詳しくはこちら
組織にイノベーションをもたらす「心理的安全性」とは

ビジョナリーマネージャーとマネジメントポリシー

マネジメント層の成果に悩むとき、マネージャーにビジョナリーマネージャー研修を実施すると共に、組織にぜひつくってもらいたいのが「マネジメントポリシー」。ビジョナリーマネージャー研修は、マネージャー本人に成長してもらうことが主な目的。一方でマネジメントポリシーは、企業理念に基づいて、メンバーをどのようにマネジメントするかの方針を定めたものです。

どちらか一方でももちろん実施する意味はありますが、両方揃えてマネジメントを実践することは、より高い効果をもたらします。マネジメントに関する課題を効果的に改善し、より良い組織にするために、ぜひ一度策定について考えてみてください。

▼マネジメントポリシーについて詳しくはこちら
“属人化”から脱却する。理念を起点とした「マネジメントポリシー」のつくりかた

3:ビジョナリーマネージャー研修の全体構造

それでは具体的に、「ビジョナリーマネージャー研修」の全体構造をご説明します。

 【STEP1:考察】マネージャーが自分の志を考察する

研修のはじめにまず、マネージャー自身のこれまでの人生を紐解きながら、今後の人生の指針となる「志」を言語化します。

自身の価値観や原体験を振り返り、自分らしい世の中への貢献の仕方や、どうありたいかを語れるようになります。

【STEP2:考察】会社と組織の志を考察する

ここではマネージャーが会社の理念体系を改めて考察し、そこに基づいて自らの所属する組織(チーム)の提供価値を言語化します。

会社の理念の背景や成り立ちを理解することで、企業理念に基づいた、自らの組織の在り方を問い直します。

【STEP3:考察】自分と会社(組織)の志の重なりを知る

STEP1で言語化した自分の志と、STEP2で理解を深めた会社と組織の志に、どのような重なりがあるかを発見します。

なぜ自分がこの会社で、この組織でマネージャーを任されているのかを自分ごととして考え、今後目指すべき姿(目標)を言語化し、共有します。

ここまでのSTEP1〜3は、以下のようなシートを元に進めていきます。

 【STEP4:学び】メンバーの価値観・らしさ・志の引き出し方を学ぶ

ここからのSTEP4〜6は、ビジョナリーマネージャーとしての、マネジメント方法を学んでいただきます。ここまでに言語化した志を、どう効果的に、メンバーへ伝えるかのスキルです。

STEP4では、メンバーの価値観や「らしさ」、パーソナリティを引き出す、コーチングメソッドを学びます。メンバーに対するコミュニケーションの理想の在り方を学び練習することで、単なるマネジメントとは異なる「志マネジメント」へと切り替えていきます。

【STEP5:実践】自分の志をメンバーに語り、メンバーの志を引き出す

実際にメンバーと向き合い、自分のパーソナリティとメンバーのパーソナリティをフラットに開示します。自らも語ることで信頼関係を構築するとともに、メンバーの価値観や志を引き出していきます。

【STEP6:実践】メンバーと会社(組織)の志の重なりを発見し、期待や役割を明確に伝える

メンバーから引き出せたパーソナリティや志と、会社(組織)の志との自然な重なりを発見します。この重なりを見出した上で、メンバーに期待している役割を明確に伝えることで、必然性を感じてもらいます。

【STEP7:共有】ここまでの発見や成果を、組織の共有財産にする

ここまでのプロセスについて、発見や成果をマネージャー間で共有します。また自らの志についても共有すると共に、今後のアクションプランを宣言します。

他のマネージャーとのサポート体制の構築や、経営陣との目線や期待値を擦り合わせる目的もあります。

【STEP8:仕組み化】ビジョナリーマネージャーが自走する仕組みをつくる

ビジョナリーマネージャー研修終了後も、組織の志実現に向かってビジョナリーマネージャーの理念体現が加速し続けるために、自走の仕組みをつくります。

具体的には、定期的な報告と共有の場を設け、それに対する目標設定と評価のサイクルを整えます。これによりビジョナリーマネージャーたちは、主体的に理念体現を続け、経営をアップデートさせ続けることができます。

4:マネージャー・メンバー、それぞれのメリット

経営層目線でのメリットが大きく見えるこの研修。しかし実際にはマネージャー層がビジョナリーマネージャーとなることで、メンバーとマネージャーの双方にメリットを生み出すことができるのです。

4-1:メンバーのメリット

・チームの心理的安全性が上がることで働きやすくなる
・業務上の目標と自らの志がリンクし、モチベーションが上がる
・評価基準が明確になり、行動の判断がしやすくなる
・ビジョン(企業理念)の実行に対し、ポジティブな印象が生まれる

業務を進める上での疑問や矛盾が少なくなり、相手の様子を伺いながら行動を決める必要がなくなるため、メンバーはより働きやすくなります。

働きやすさが上がれば当然、生産性は上がり、離職率は下がりますから、会社にとっても大きなメリットといえます。

4-2:マネージャーのメリット

・業務管理中心のマネジメントから、メンバーの将来を踏まえたマネジメントが可能になる
・メンバーのモチベーションが上がることで、チームの成果が出やすくなる
・メンバーのパーソナリティや価値観を理解することで、マネジメントしやすくなる
・チーム全体の信頼度が上がり、役割や組織を超えてサポートし合うチームになる

メンバーが働きやすくなれば、上司であるマネージャーも、メンバーの不満に対応する時間が少なくなります。

またチームの成果が上がることで、マネージャーとしての評価向上にもつながります。

5:まとめ

企業における中間層のマネージャーを「ビジョナリーマネージャー」に育てることは、チーム、ひいては会社全体をアップデートし“理念経営”の実現につながります

それどころか、マネージャー本人も、その下で働くメンバーにとっても、より働きやすい環境をつくることができるのです。

現在多くの企業では、評価シートに数値で表せる業務評価項目しかなく、個人の価値観や実現したい想いを組織で共有できる機会はほとんどありません。

しかし企業で働いているのは、本来は考え方も実現したい夢も異なる、ひとりの人間です。その一人ひとりがどのような想いで、何を実現したくて働いているのかを知り、企業は個人の、個人は企業のビジョン実現を叶え合うことで、より良い関係性がつくれるのではないでしょうか。

まずはこの「ビジョナリーマネージャー研修」で、マネージャー層がそれぞれの「志」と会社の「志」をリンクさせ、その重要性を知ることで、メンバーにも伝播させていく。

こうして会社と個人の目標を紐づけることで、会社の成長にも、メンバーそれぞれの成長にもつながっていくことでしょう。

これはまさに、今後ますます「個」が重要となってくる時代に求められる、企業運営のやり方です。

その第一歩として、ぜひ「ビジョナリーマネージャー研修」を参考にしてみてください。

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