ブランディングの本質とは、「企業や商品の存在意義を明確化し、その意義が生み出す提供価値を求めている人々に想起させること」です。
この一文を見ても、「結局ブランディングって何?」と首を傾げる方も多いのではないでしょうか?
また、抽象的で複雑だからこそ、うまく整理できずに立ち止まっている方も多いのではないでしょうか?
そんな方に向けてもう少し具体的に説明すると、次のように整理できます。
ブランディングとは
①存在意義を明確にする:
企業理念を含むコーポレートアイデンティティ(CI)を策定すること
②存在意義を軸に活動する:
コーポレートアイデンティティ(CI)に基づいた経営・活動を行うこと
ブランディングに関連する語句の整理
◎コーポレートアイデンティティ(CI):
マインド アイデンティティ(MI)、ビヘイビア アイデンティティ(BI)、ビジュアル アイデンティティ(VI)の総称
◎企業理念:
マインド アイデンティティ(MI)のことであり、ミッション、ビジョン、バリュー、スピリット、スローガンの総称
ブランディングの分類
◎インナーブランディング:企業文化づくり
◎商品・事業ブランディング:事業づくり
◎採用・育成ブランディング:人・組織づくり
※これらを総称して「コーポレートブランディング」と呼ぶ
これが、ブランディングの全体像です。
正直にお伝えすると、この定義にはまだまだ議論の余地があると思います。
なぜなら、約20年に渡ってブランディングに携わってきた私たち自身が、年月を重ねるごとに定義や解釈の変化を実感してきたからです。これからもどんどん定義が変わっていくでしょう。それだけブランディングは深く複雑だということです。
ただ、そんな数々の経験をしてきた私たちが、2021年現在もっとも真実に近い答えだと確信しています。
この記事では、約20年の経験で培った私たちのブランディングに関する考えをまとめました。上記の全体像を、よりわかりやすく噛み砕いて解説しています。経営者だけでなく、全てのビジネスパーソンに読んでいただきたいと思います。
この記事でお話する内容は、ブランディングの小手先のテクニックではなく、私たちが考えるブランディングにおけるど真ん中の考え方とその実行方法です。
ぜひ、本記事を参考に「選ばれるブランド構築」のきっかけにしていただけますと幸いです。
1:ブランディングとは
冒頭でもお話しましたが、ブランディングの本質とは、「企業や商品の存在意義を明確化し、その意義が生み出す提供価値を求めている人々に想起させること」にあります。
また、一言でブランディングと言っても対象物によって、様々な種類のブランディングが存在します。
コーポレート(企業)ブランディング
企業理念を軸にした企業自体のブランディング。すべてのブランディングの起点となるブランディング。
事業ブランディング
事業や部という組織単位で行うブランディング。組織自体が事業や新規開発など独特のミッションを持ち、前面に立ってマーケットに価値提供をしていく場合などに行われます。
インナーブランディング
理念浸透や社内の活性化、文化醸成など、組織で働く人たちのモチベーションや働きがいを高めるために行う社内向けのブランディングです。
商品(製品・サービス)ブランディング
ブランディングと言われて最初に浮かぶ、一般消費者向けの商品のブランディング。しかし、一番初めに手を付けることで、失敗をしてしまうケースも多い領域です。
採用ブランディング
新卒・中途といった求職者にとって、企業が働く上で価値がある職場であることをイメージしてもらうためのブランディング。近年では、コーポレートブランディングの一環として、地続きで考えられるケースが多いです。
これらのように多様なブランディング領域がありますが、最も大切でその他のブランディングの起点となるといえるのがコーポレートブランディングです。
最初からコーポレートブランディングを考えている方はもちろんのこと、現在商品(製品・サービス)ブランディングを考えている方で、まだコーポレートブランディングに着手をされていない方は、まずはコーポレートブランディングから始めることが有用です。
自分自身のことを知らなければ、自分たちが作る商品(製品・サービス)のブランディングはできません。ついつい、自分たちのことは後回しになりがちですが、ご紹介させていただいた順番にしたがって、コーポレートブランディングから取り組むことを強くお勧めします。
1-1:一般的なブランディングの定義
ブランドの語源は、元々焼き印を押す意味の「Burned」で、自分の家畜と他人の家畜を間違えないよう、焼き印を押して区別していたことから、「銘柄」「商標」を「brand(ブランド)」と言うようになった。というもの。(【語源由来辞典】より)
そして、ブランディングとは、ターゲットの頭の中に、企業や商品に対する機能的な価値以上の良いイメージをつくり出すことです。
企業や商品の価値を明確にし、差別化させること。さらに付加価値を積み重ねていく、一連の施策や活動と言えそうです。
1-2:ブランドの存在意義を定め、それを軸に経営活動を行うこと
ブランディングの一般的な意味合いは前述通りなのですが、唯一無二の企業や商品のブランディングに向け、もう少し核心に迫ってみましょう。
パラドックスでは、ブランディングは、企業やブランドの存在意義を明確に定め、それを軸に経営活動を行うことで実現されると考えています。
「企業やブランドの存在意義を明確に定める」とは、企業理念などを含むコーポレートアイデンティティ(CI)を策定するということです。
「それを軸に経営活動を行うこと」とは、上記CIに基づいた理念経営を行うということです。
しかし、なぜブランディングによって、労力も、費用も、時間もかかる企業や商品の存在意義を明確にしないといけないのでしょうか?
マーケティングやプロモーションから考えた方が早く成果が出るのでは?そう思われる方もいるかと思います。
企業の存在意義に立ち返る大きな理由。それは現代社会における環境要因が関係しています。テクノロジーが進化した現代においては、製品・サービスはもちろんのこと、企業自体が世の中に溢れており、明らかな供給過多と言っていいでしょう。
さらに、今回の新型コロナウイルスのような予想が難しい変化によって、世の中はたった数ヶ月で大きく変わってしまうこともあります。
あらゆるものがコモディティ化(一般化)し、流行の一部分として現れては消えていく中で、果たして人々は何を基準に買う物、受けるサービス、働く場所、投資先などを選んでいるのでしょうか。
選択肢であふれる現在、人々は企業、商品の表面的な部分だけではなく、様々な周辺情報を取得しながら、それらのストーリーや信頼性、知人の声などを考慮にいれて信用・信頼をベースにして日々の選択を行っています。
意識すべきは、これまでの「何を買うか」だけではなく、「何を信頼するか」 という消費者の価値観の変化だと私たちは考えています。
だからこそ、その信頼の起点となるブランディングの価値が高まり、多くの方がブランディングに注目するようになったのだと考えています。これを読んでくれている皆さんも同じことをお考えかもしれません。
1-3:ゴールデンサークルから、ブランドコミュニケーションを考える
ここで、ブランディングをする際に大切なコミュニケーションの順番を表す「ゴールデンサークル」という考え方を紹介させていただきます。
ゴールデンサークルとは、イギリスの組織コンサルタントであり作家のサイモン・シネック氏がTEDで語った理論です。
サイモン・シネック氏によると人に何かしらの情報を伝え、行動を促したい時に、「Why・How・What」という構成要素が存在し、「Why」から伝え始めることが重要だとしています。
つまり、人は「何をしているか」ではなく、「なぜ、それをしているか」に心を動かされるという理論です。
ゴールデンサークルを企業や商品のブランディングに当てはめると
・「Why(なぜそれをやっているのか?)」
=企業や商品の「存在意義」であり「ブランディング」の核
とすることができます。
Whyが明確で、差別化され、強固であればあるほど、How/Whatもその企業らしい整合性のとれたものになりますし、世の中に伝える際にも、必然性のあるストーリーとして伝えやすくなるのです。
コラム:「ブランディング」と「マーケティング」や「プロモーション」との違い
ブランディングの話をするときに、一緒に出てくる言葉として、「マーケティング」や「プロモーション」という言葉があります。
企業名やブランド名の認知拡大にはマーケティングが必要なので、まず知ってもらうためにマーケティングを強化しよう!と考える方もいると思います。
しかし、マーケティングだけをいくら強化しても、イメージ通りの強いブランド力はなかなか育ちません。
ここまでお読みいただいた皆さんなら、すでにお気づきかもしれませんが、そこにブランディングの要素が欠けているからです。
企業や商品の存在意義から考えられたブランディングが起点となり、それをベースとしたマーケティング活動を行うから唯一無二の強いブランドが育っていくのです。
マーケティング:
マーケティングは商品を売るため(コト消費なら、してもらうため)の活動です。
マーケティングの4Pといわれる、product, price, place, promotionが、それぞれにあったりしますね。
ターゲットを想定し、商品としての価値を考えること。商品をどう流通させるか、どれくらいの値段か、どのくらい製造するか、どう広告するか、などがマーケティングの主な活動ですね。ポイントは、売るための活動だという点です。
プロモーション:
プロモーションは上記のマーケティング活動の4Pのpromotionに当てはまり、販売側と顧客のコミュニケーション全般を言います。
プロモーションはさらに、「advertising(広告)」「sales promotion(販売促進)」「public relation(広報)」「personal selling(人的販売)」と細かく分けることができます。
ブランディングとマーケティングの関係性を前述したゴールデンサークルに改めて当てはめるとこんな感じかもしれません。
▼こちらの記事にもブランディングとマーケティングについて詳細が書いてありますので、併せてご覧ください!
→ ブランディングとマーケティング。違いとその関係性をスッキリ解説!
2:ブランディングの全体像
次は、ブランディングをより深くに理解するために、その全体像と構造を見ていきましょう。
ブランディングには、大きく分けて構築フェーズと実行フェーズがあるのですが、前者は「ブランドの存在意義を明確にする」こと、後者が「存在意義を軸に経営活動を行う」こと。という理解をしていただければ、分かりやすいかと思います。
では、それぞれについて説明をしていきます。
2-1:企業の存在意義を明確にする
企業ブランドの存在意義を明確にするということは、企業理念に代表されるようなコーポレートアイデンティティ(以下CI)を明確にするということです。
※コーポレートアイデンティティ(CI)は、マインドアイデンティティ(MI)・ビジュアルアイデンティティ(VI)・ビヘイビアアイデンティティ(BI)からできています。
約20年に渡りブランディングをしてきた経験から、このCIの重要性を強く感じています。この核がそもそもなかったり、曖昧だったりすると顧客、社員、求職者といったすべてのステークホルダーに、どのように会社を見せていくか?どのような価値を提供していくのか?という指標が定まらず、ブランディングに着手することができません。
むしろ、CIなしで行うブランディング施策とは、ブランディングではなく、マーケティングやプロモーションと言ってもいいのかもしれません。
CIは、以下の3つのパートからできています。
・マインドアイデンティティ|心の要素(企業理念)
・ビジュアルアイデンティティ|見た目の要素(ロゴやコーポレートカラー)
・ビヘイビアアイデンティティ|行動の要素(社員一人ひとりにおける日々の行動)
では、順番に見ていきましょう。
2-1-1:CIの核となるマインド アイデンティティ(=企業理念)
CIの中で最も大事なものがマインド アイデンティティ(以下MI)であり、 「企業の存在意義とあり方を言語化したもの」、 つまり企業理念がこれに当たります。
・その企業が何のために存在しているのか。
・どこに向かって企業活動をしているのか。
・その企業の強みはなんなのか?
・日々どういったことを心がけているのか。
企業の思想や使命、志といった根本の考え方・あり方の特徴を言語化したものが企業理念(MI)となります。皆さんよく企業理念という言葉をお聞きするかもしれませんが、この企業理念はまさにMIのことを指しています。
この企業理念(MI)は、理念言語体系において、次の5つの要素に分解することができます。
ミッション(パーパス):
企業理念の中心にあるのが、ミッションです。
一言でいうなら、「日々果たすべき使命」。
過去、現在、未来にまたがり、日々続けていくことがミッションになります。パーパスと呼ばれることもあります。
ビジョン:
ミッションを日々遂行することで、辿り着きたい(実現したい)世界のことであり、自分たちが目指す未来の姿です。
さらに、これは自社だけの未来ではなく、自らのビジネスを通じてどのような社会を実現させたいかという社会的意義や価値貢献といった「世の中との接点」を合わせ持ったものです。
バリュー(プロミス):
その企業やブランドがマーケットやお客様に提供している独自の価値や強みのことです。顧客やマーケットとの約束なので、プロミスと呼ばれることもあります。
スピリット(クレド):
ミッション・ビジョンを実現するため、
組織に属する一人ひとりが日々どう考え、どう行動すべきか、という心がけや行動の指針を表したものです。
「クレド」と言い換えられる場合もあります。
スローガン:
企業やブランドのミッション・ビジョンや独自の提供価値を顧客やマーケットに向けて、
分かりやすく、端的に伝えるための合い言葉になります。
まずはCIの核となるMI、つまり企業理念についてご理解いただけたでしょうか。
2-1-2:ビヘイビア アイデンティティによる言行一致
ビヘイビア アイデンティティ(以下BI)とは、社員やスタッフがマインドアイデンティティに基づいて、 その企業らしい一貫した行動を、日々の仕事やマネジメントといったあらゆるところで行い続けることで生まれる行動のアイデンティティです。
例えば、ディズニーリゾートのスタッフ(キャスト)を思い浮かべていただけると、 イメージしやすいと思います。 ディズニーリゾートには、そもそも以下のようなマインドアイデンティティが存在します。
・理念(=ミッション) 「幸せを提供する」
・行動指針(=スピリット)「安全性、礼儀正しさ、ショー、効率」
ディズニーリゾートでは、上スピリットがしっかりと行動にまで落としこまれており、安全性を第一にしながらも、ディズニーという魔法のショーを盛り立てる一人のキャスト(役者)として、どのスタッフも笑顔とホスピタリティに溢れた行動をしています。
ただ、この素晴らしいディズニーリゾートの接客も1日でできたものではありません。紆余曲折を経ながら、理想を行動に落とし込み、企業としての文化にするまで継続したからこそ、現在のような世界トップクラスのアミューズメントパークとなり、人々から、ディズニーで働きたいと憧れられる存在になれたのです。
企業として理想であるMIを掲げ、メンバーが理解し、日々の行動で実践し続ける。この言行一致が、信頼されるブランドづくりにつながっていくのです。
マインドアイデンティティが、頭で理解されているだけでなく、しっかりと社員一人ひとりに浸透し、行動につながっている状態。どこの店舗に行っても、同じような質の高いサービスを提供できている状態。マネジメントの際に、理念に紐づいた価値観でコミュニケーションがとれている状態。
これらすべてを実現させているのがBIの存在なのです。
2-1-3:ビジュアル アイデンティティによる世界観づくり
ビジュアル アイデンティティ(以下VI)とは、 言語化された理念やブランドアイデンティティを、表現やデザインに落とし込み、 webやパンフレットなどの各種広告物、空間やユニフォームなどのアウトプットに対し、一貫した世界観をつくり上げていくことです。
視覚的な世界観を統一させることによっても、 企業や商品・サービスの目指すべき姿を社内外に効率的、効果的に認知・浸透させることができ、そのブランドイメージをターゲットの頭の中に確立することができます。
人間が物事を判断する際に利用する五感の割合も、視覚が一番高く87%、聴覚が7%、触覚が3%、嗅覚2%、味覚1% というデータも出ています。
出展:http://www2.gsis.kumamoto-u.ac.jp/~info/2004_2/works/g031a081/exe.pdf
そして、「VI」こそが視覚情報にあたります。
VIを策定する上でポイントになることは、センスや感性だけに捉われないことです。どうしてもデザイナーやクリエーターのセンスや感性を重視してしまいがちですが、 実はとてもシステマチックな一面も持っています。
そもそも、個々の企業にはマインドアイデンティティで規定したような 「らしさ(ブランドパーソナリティ)」がありますし、 人々には色や形から抱くイメージにも共通した感覚があるからです。
たとえば、みなさんは「情熱的」という言葉から何色を想像しますか? おそらく、「赤」や「オレンジ」といった暖色系のカラーではないでしょうか。(世界によっては異なる認識もありますが)
他にも「冷たい」という言葉からは「青」といった寒色系のカラーを、 また、「茶」「黒」といったカラーからは、「大人っぽさ」「高級感」などを連想できるのではないでしょうか。
このように多くの人々に視覚的メッセージを伝える場合には、 その企業の「らしさ(先進的・ユニーク・信頼感があるなど)」と 人々に共通している「心理学的な感覚(情熱的は赤色・クールは青色など)」をつなぎ合わせることで、納得感があり、共感されやすいVIをつくることが大事なのです。
策定したVIは あらゆるところで統一して使用することが大切です。 たとえば、企業HP、パンフレット、動画、名刺、封筒など、その企業に関わるあらゆるものに共通する世界観をつくりましょう。
そうすることで、ビジュアル面から企業のアイデンティティをつくり上げていくことが可能になります。
これまで説明したように、MI、VI、BI、これら3つを合わせてコーポレートアイデンティティ(CI)と呼び、まずはこのCIを固めることがブランディング構築の第一歩となります。
2-2:存在意義を軸に経営活動を行う
CIづくりを通じて、企業の存在意義を企業理念として明確化した後は、策定した理念を軸に経営活動を行っていきます。
パラドックスでは、企業理念を軸に経営ができている状態を、理念経営と呼びます。
理念経営とは、文字通り「理念」を元に行う「経営」のこと。図にすると、下記のように表すことができます。
理念経営の実践には、理念起点に以下の3つのカテゴリーでやるべきことがあります。
・企業文化づくり(インナーブランディング)
・事業づくり(商品・事業ブランディング)
・人・組織づくり(採用・育成ブランディング)
理念を起点に、これら3つの領域におけるブランディングを横断的に実践し、企業を一つの有機的な組織にしていく理念経営こそが、真のコーポレートブランディングにつながると私たちは考えています。
では次の3章では、上記の各ブランディングについて、詳しくみていきましょう。
3:理念経営に必要なブランディング実践法
理念経営を行うためには、インナーブランディング(企業文化づくり)、商品・事業ブランディング(事業づくり)、採用・育成ブランディング(人・組織づくり)を行う必要があります。
どのピースが欠けても、経営はうまく回りません。各種ブランディングが組織を横断しながら、最終的に組織全体にどのような影響を及ぼしていくかをイメージしながら、読み進めてください。
3-1:インナーブランディングについて −企業文化づくり−
理念経営を行うには、まず理念に基づいた企業文化を組織に根付かせる必要があります。例えば、農業を始める際にも、いきなり地面にタネを蒔いても芽は育ちませんよね。理念経営における土壌づくり、それが「企業文化づくり」です。
この企業文化づくりは理念浸透を通じて行われることも多く、パラドックスでは理念浸透や企業文化づくりをインナーブランディングの一環として捉えています。
「会社の目指すべき方向が曖昧なので、自分の仕事との紐づけが難しい。」
「共通の価値観がないので、評価基準や判断基準が属人的になってしまう。」
「マネジメントが人によって異なり、誰が正しいのか分からない。」
上記のような悩みや不安の声が社員から生まれている場合、それは企業理念に紐づいた企業文化の欠如が大きな原因の一つと言えるかもしれません。
前章でブランディングの種類をいくつかお話しましたが、最初に手をつけたいのは、このインナーブランディングになります。最終的な理念経営の土台になるものなので、この他の商品・サービスブランディングや採用・育成ブランディングと並行してでも、継続的に実施すべきだといえるでしょう。
社員が企業理念への理解を深め、自然に自らの行動に移せるようになり、はじめて企業文化と言えるのですが、文化が醸成されるまでには時間がかかります。
一般的には、企業文化づくりには「理解」「共感」「実践」の3つのフェーズがあるといわれています。それぞれについて簡単にご説明します。
【理解】:自分自身を知り、組織の考えを知る
最初の理解フェーズでは、社員一人ひとりが自らのミッション・ビジョンを知ることから始まります。自分自身への理解を踏まえたうえで、個の集合体である会社が目指すべきミッション・ビジョンを理解し、双方の接続を行っていきます。
企業理念によって、企業の目指すべき方向性が明確になっていれば、メンバー自身が、どうやって会社と同じ方向に向かえば良いか。もしくは、そこに共通点を見いだせるか。を考える上での道しるべとなります。
一人ひとりが、現在地点から、自らの個性や強みを活かせる方法で、どうやってそのゴールに向かえば良いかを考えていく。この考えるという過程において、企業理念への理解が深まると共に、徐々に自らの実現したい未来と仕事を通じて実現できる未来の共通点をイメージしていくことが大事です。
メンバーを持つマネージャーがいる場合は、マネージャーが個々のメンバーが成し遂げたいことやキャリア形成における目標をしっかり理解した上で、会社の方向性を掛け合わせて、その人なりのキャリア形成ができるようにサポートするという役割を担います。
▼「自分自身のミッション・ビジョンが見つからない……」というメンバーにおすすめの記事はこちら
→ 仕事を通じて考える。自分だけの「生きる意味」の見つけ方
【共感】:仲間・組織の想いに共感する
メンバーそれぞれが自らのミッションやビジョンをイメージできたら、次のステップでは、それをメンバー同士やチーム内で共有します。自分の足りないところを補ってくれるようなメンバーや、考え方が似ているメンバーと出会うことで、チームでの共感が生まれます。
他人が何を考え、どんな強みや夢・目標を持っているのかを知り、共感できれば、普段の仕事の中で、見つけた有益な情報や機会について、その本人に教えるなど、応援することができます。
こうした非公式なコミュニケーションによって、組織や上下関係を超えた有機的なつながりが生まれ、社内ネットワークが活発化していきます。最終的にはお互いの夢や目標を知り、叶え合える組織になることが理想の姿といえるでしょう。
ここでもマネージャーには、個々やチームの情報を活かして、個と組織と会社をどう組み合わせながらマネジメントしていくかを考えることが求められます。
本来は、個人のミッション・ビジョンを理解した上で、配属やチーム編成、プロジェクトの割り振りを進めるべきですが、ほとんどの組織でこの大事なステップが飛ばされているのが現状です。
配置やチーム編成などが上手くいかない場合は、個々のスキルや経験といった目に見える情報だけではなく、それぞれのミッション・ビジョンからヒアリングしていくことをお勧めします。
こうして、個と組織、そして会社のミッション・ビジョンを理解することにより、お互いに信頼と共感が生まれます。各々が組織の中、会社の中での自分の役割を理解することで、すべきことが明確になり、主体的に動きやすくなっていること。これが共感フェーズで実現したい組織の状態です。
【実践】:知るから行動へ
最後の実践フェーズでは、社員が日々の仕事の中で、理念を体現しやすい仕組みを整えたり、他者のエピソードを紹介することで、より多くの実践機会をつくり出していきます。
例えばですが、以下のような施策がよく行われています。
・企業理念に沿った行動をした社員のエピソード共有
・企業理念を体現した人の表彰
・企業理念に沿った行動を評価する評価制度の改定
企業理念を軸にした文化づくりは、一度実行して終わりではなく、継続的に「理解」「共感」「実践」のサイクルを回転させる必要があります。
定期的に企業理念を振り返って理解を深めながら、自分とチーム、会社としての目標をチューニングし、より高いレベルのステージへと螺旋階段を上に登り続けるように進み続けていく、終わりのない活動とも言えます。
▼インナーブランディングの詳しい進め方について詳しくは、こちらをご覧ください
→ インナーブランディングによる企業文化の作り方
<インナーブランディングの事例:内海産業株式会社>
プロジェクトの概要:
インナーブランディングによって、経営体制の移行に伴う『①:理念策定とビジュアルアイデンティティ(以下VI)の刷新、②:浸透活動のベースづくり、③:浸透活動への継続的な伴走、④:イノベーションの促進』という4つのフェーズを通じて、企業風土の変革、そして離職率の低減を実現しました。
効果:
毎年実施している理念浸透調査では、ミッション、ビジョンへの理解、共感はもちろん、働きがいに関する数値も年々改善しています。社内の様子は見違えるように変わり、多くの社員が生き生きとした表情で、楽しそうに働くようになりました。それを証明するかのように、理念策定前は15%ほどあった離職率が、2019年の段階で約4%と約1/3以下まで低下しました。
▼プロジェクトの詳細は下記よりご覧ください
→ 『社員のココロに火をつけた、インナーブランディングプロジェクト』
3-2:商品・事業ブランディングについて −事業づくり−
続いては、理念に基づいた事業や商品(製品・サービス)づくりについてです。たとえば、次のような事業課題があれば、企業理念に基づいた事業が運営できていないことが原因として考えられます。
「事業に一貫性がなく、提供価値の本質が分からない。」
「本当に大事にすべき真の顧客が分からない。」
「社員が自社商品を愛せていない。もしくは、その価値を理解できていない。」
これらはすべて、事業や商品を立ち上げる際に、ターゲットと提供価値の設定が曖昧なまま動き出してしまうことが原因である場合が多いです。
この記事の冒頭でもお話した通り、現在のマーケットがモノ・コトであふれ、あらゆるものがコモディティ化し、いくら商品の質が良くても差別化ができないと売れない時代です。
競争が激化するマーケットを目の前にすると、私たちはどうしても既存の商品そのものを、どうやって売るかということ(マーケティングの手法など)に意識が向いてしまいます。しかし、本来は事業や商品を通じて何を売っているか、つまり提供価値が何かを理解するところ(ブランディングの本質)から始める必要があるでしょう。
そして、その提供価値が何かを知っているのは、売り手である自分たちではなく、買い手である顧客です。これもよくあるケースなのですが、知らず知らずに、外から見た自分たちの価値を自分たちで決めてしまう。
結果として、世の中との価値交換にギャップが生まれ、いつの間にか独りよがりな事業や商品ばかりに貴重な経営資源を使ってしまうケースはどの企業にも考えられる落とし穴です。
忘れてはいけないのは、事業だけでなく商品においても、理念を起点に使命・提供価値・真の顧客という関係性がしっかりと描けているかということです。
【使命】 私たちの使命・理念とは何か? なぜ、この事業・商品をつくったのか?
【顧客】 誰のために、つくったのか? 私たちの使命実現に関わる対象は誰か?
【提供価値】 相手にとって、真の価値とは何か? それが提供できているのか?
使命・顧客・提供価値という、3つの要素をしっかりと組み合わせながら、事業・商品を展開していくことが求められています。
では、それぞれの要素について、詳細を見ていきましょう。
【使命】:ミッションに紐づいた事業・商品・サービスづくり
事業・商品・サービスづくりにおいて、まず大切にすべきことは、企業の理念に紐づいたものになっているかということです。
あらゆる情報が手に入り、共感性などで購入するものが選ばれる時代において、「なぜ・誰が・どのようにして、誰にその商品を提供するに至ったのか」という背景はとても重要な要素になります。
もちろん、とって付けたような企業理念との接続を事業・商品・サービスに与えれば良いのではありません。繰り返しになってしまいますが、その企業だからこその必然性を伴った理念との紐づきを考え抜いて事業・商品・サービス作りに落とし込んでみてください。
それができるだけでも、その事業・商品・サービスの独自性や唯一性は格段に高まります。
▼商品・事業ブランディングについて詳しくは、こちらをご覧ください
→ 誤解しがちなリブランディング。 本当の意味とその手法とは?
【顧客】:ブランドパートナーの設定
ミッションに紐づいた商品が生まれると、次は真の顧客探しです。この「真の顧客」のことを、私たちは「ブランドパートナー」と呼んでいます。
ブランドパートナーとは、そのブランドにとっての理想のお客様。ただ、たくさん商品を買ってくれたり、サービスを利用してくれるだけではなく、ブランドそのものの価値をよく理解し、その価値についてまわりの人に広めてくれる人。そして、ブランドのいまを愛しているだけではなく、これからの未来を一緒につくっていってくれる存在ともいえます。
商品・事業ブランディングにおいては、このブランドパートナーの存在が最も重要です。
なぜなら、事業・商品は常に成長させていかなければならず、次のステップへ進むには、ブランドパートナーの意見を聞き、より良い商品を生み出していく必要が出てきます。
ゆくゆく、企業の理念に共感してくれたブランドパートナーが見つかれば、積極的にその声を聞きにいくことをおすすめします。なぜなら、往々にして、作り手(売り手)が考えている商品の提供価値と、実際に買い手が評価している商品の提供価値は“ずれている”ことが多いからです。
ブランドパートナーのことを100%理解していると過信した企業が、良かれと思って独自に商品のリニューアルを行った結果、ブランドパートナーが買っていた本当の価値が薄れてしまい、せっかくの支持者が離れていってしまうケースは珍しくありません。
逆に、その価値観のギャップを的確に掴み続けることができれば、商品の改善や次の商品開発の大きなヒントにつながり、企業にとっては貴重な資産になります。
▼ブランドパートナーについて詳しくは、こちらをご覧ください
→ ブランド力を高めるための本当のロイヤルカスタマーとは?
【提供価値】:ブランドパートナーへの価値提供
最後に大切なのは、ブランドパートナーが喜ぶ価値をしっかりと届けることです。
ブランドパートナーとして彼ら・彼女らがどのような人物なのかを知り、本当に求めている価値を推測ではなく、正しく理解し、提供していく必要があります。
ブランドパートナーは、いま何に困っていて(課題)、それを企業のミッションと絡めながらどのような価値を提供するのか(解決)。
たとえば、世界最貧国のバングラデシュにあるグラミン銀行では、「貧困のない世界をつくる。」というミッションのもと、通常のターゲットになりそうな地域のリーダーではなく、最も貧困に喘ぎながら、家族のことを長期的に考えることができる貧困家庭の主婦をブランドパートナーに据え少額の融資を行うことで、多くの家庭を貧困から救うことに成功しました。
▼グラミン銀行についての詳細はこちら
→ マイクロクレジット、ソーシャルビジネスを生んだグラミン銀行の理念経営
ミッションをベースに、顧客であるブランドパートナーの選定と提供価値を踏まえた上での事業・商品・サービスづくり。それらがひとつのストーリーとなり、ゆくゆくは、企業の想いとブランドパートナーの想いを掛け合わせた共創から、さらに新しい価値を持った商品を生み出していく仕組みづくりができれば理想的です。
<事業ブランディングの事例:沼津港深海水族館>
プロジェクトの概要:
沼津港深海水族館〜シーラカンスミュージアム〜は、日本一の深度(最深部2,500m )を誇る駿河湾の玄関口・沼津港につくられた「深海生物」をテーマとした水族館。東日本大震災の爪痕生々しい2011年、地元の老舗水産企業・佐政水産さまが沼津の活性化を目的に企画・建設しました。
かつて一大生産地として名を馳せた干物産業も徐々に縮小し、人口流出も深刻なレベルに達している沼津をなんとか活性化させたい、「地元の誇り」を生み出したい、沼津を「来たい街、住みたい街」に変えていきたい。そんな想いから誕生した日本一深い駿河湾が目の前にある沼津港だからできる「深海生物」をテーマとした水族館です。
効果:
OPEN間もなくメディア取材が殺到し、「初年度入場者年間20万人」の目標を大幅に上回る24万人をマーク。3年目には40万人以上という想定以上の集客を実現しました。夏休みシーズンには入場まで2時間待ち、という人気ぶりです。
沼津への観光客数は数年で約1.8倍(年間100万人→180万人)となり、水族館および周辺の飲食店などで雇用創出を実現したほか、深海生物をモチーフとした新たなお土産産業も生まれました。
テレビ局との共同制作番組の発信、新種の発見、古代魚「ラブカ」の生体展示にも成功。さらに(これまでは二束三文にしかならなかった)深海魚の値段が約10倍にまでアップし、地元漁師さんの新たな収入源になりつつあります。そもそもの目的であった「地域活性」にも、成果が出始めています。
▼プロジェクトの詳細は下記よりご覧ください。
→ 『地域を活性化した、水族館ブランディングプロジェクト』
3-3:採用・育成ブランディングについて −人・組織づくり−
組織の進化には、当然人材の採用・育成活動が不可欠です。ただし、必要な人員を集めるのではなく、理念に共感する同志を集め、育てることが、理念経営におけるHR活動の必須条件になります。
ここで、大事にしておきたい考え方は、「頭数(あたまかず)」を揃えるのではなく、「心数(こころかず)」を増やすことです。
人材採用・育成は、企業の未来を左右する重要な要素です。理念実現に向けた事業・人材戦略、そしてそこに紐づく採用・育成戦略という大きなストーリーを描いた上で、さらには理念共感による採用から入社後の育成という細部に至るまで、地続きで設計していきましょう。
理念を基にした人・組織づくりは、大きく以下の順に添って進めていくことができます。
①事業戦略
②人材戦略
③採用戦略/育成戦略
④採用コミュニケーション戦略
ここでは採用・育成ブランディングに関係する②の人材戦略以降にフォーカスして説明をしていきます。
【人材戦略】:人材要件の作成
人材戦略を立てるフェーズでは、まず事業戦略を進める上で必要な役割と、割り当てる人材の要件を作成します。各ポジションについて、社内の人材を育成・抜擢する、または新たな人材を採用するかといった人事情報を整理しましょう。
【採用戦略/育成戦略】:採用力と育成力の把握
次の採用戦略/育成戦略では、既にいる人材をどのように育成するか、新たな人材をどのように採用するかの戦略を立てましょう。
国内の人口減少はもちろんのこと、海外の人材から見ても、日本で働くということが、以前に比べて魅力的ではなくなってきました。大量に採用した後は育成せず、自然に残った人材だけで企業を運営できるような時代はすでに過去の話です。
企業の組織構成バランスにおいて、優秀な向上心のある人材20%、一般的な現状維持を望む人材60%、周りの足を引っ張る人材20%という、2:6:2の法則があるといわれますが、そもそもの労働人口の母数が少ない日本においては、企業は最後の20%の人材の可能性をいかに最大化できるかどうかが問われる時代になっていきます。
つまり、これからの企業にとっては、入り口の採用力だけでなく、育成力こそが他社との大きな差別化となってくるでしょう。
【採用コミュニケーション戦略】:ターゲット設定やツール制作
採用コミュニケーション戦略では、新たな人材採用にあたり、ターゲットの設定やコミュニケーションツールの用意、実施する施策について戦略を立てていきます。
採用が上手くいっていない企業で多いのが、経営と人事が完全に分離しているケースです。人の集合体である企業にとって、人事は経営に直結する重要課題です。現在、ヒト・モノ・カネ・情報などといった企業資産の中で、得にくいのがヒトであり、人的資源だといえるでしょう。
最近では「採用ブランディング」という言葉を聞く機会も多いと思います。採用ブランディングと聞くと、多くの方は「採用コミュニケーション戦略」の課題から始まり、「どのようなターゲットに向けて」、「どのようなメッセージでコミュニケーションをしていくか」、そのためには「どのような採用ツールをつくるか」「説明会は何回開くか」などを想像するかもしれません。
しかし、本来の採用ブランディングとは、事業・人材戦略を実現するために、採用・育成戦略をふまえて、最適な採用コミュニケーションを構築するといった一連の流れになります。
理念経営に欠かせない人材の採用・育成だからこそ、しっかりと理念に紐づいた採用・育成ブランディングの構築を目指してみてください。
▼採用ブランディングについては、こちらをご覧ください
→ 企業の成長に必要不可欠な同志が集まる「採用ブランディング」を徹底解説
<採用・育成ブランディングの事例:日鉄鉱業株式会社>
プロジェクトの概要:
鉄鋼用石灰石の生産量日本一を誇る総合資源会社、日鉄鉱業。創業は昭和14年。以来、石灰石をはじめとする地下資源の開発で、日本の基幹産業へ原料供給を果たしてきました。採用における課題は、新卒社員の離職率の高さで、原因は就活時の勤務イメージと入社後の実務に大きなギャップでした。
本社が丸の内にあることや、資源やエネルギーを扱うダイナミックな会社という背景から、商社のような働き方をイメージして入社してくる学生が多かったのです。しかし、実際に働くのは自然に囲まれた鉱山。働く環境だけでなく、田舎での生活に慣れず、会社を後にする社員が多くいました。
効果:
採用ツールを会社案内から、山での暮らし案内に変えることによって「鉱山で働きたい」という強い志望動機を持つ学生が集まるようになりました。ありのままの日鉄鉱業を伝えることで、事前の理解・認識のミスマッチも減り、内定辞退者が減少。比較的安心感をもって内定を受諾いただいています。
最大の課題点であった“入社後のギャップによる離職”も減りました。2008年の採用スローガン策定から、今年で12年目。今なお、その言葉を軸にバラマキ用のDM作成やパンフレット改定など様々ツールへ展開。採用ブランディングを強化しています。
▼プロジェクトの詳細は下記よりご覧ください
→ 『山で働く。山で暮らす。ありのままを伝える採用ブランディング』
3-4:コーポレートブランディングについて −理念経営による企業づくり−
ここで改めて最初の図に戻ります。企業理念の構築と初期浸透が終わった後は、上記の3つのブランディングを組み合わせていくことで、立体的な企業づくり(コーポレートブランディング)をしやすくなります。
すでに本メディアの各記事をご覧になっていただいた方は、お分かりかも知れませんが、理念経営による、各領域におけるブランディングには終わりがなく、常に次の高みに向かって改善していくことが必要です。
その集大成であり、最終的なアウトプットともいえる企業づくりもまた、終わることはありません。変化の激しい現代社会で、唯一変わらないことは、“変わり続けなければいけないこと”です。
理念経営に真摯に取り組めば取り組むほど、次々と新しい改善点が見つかりますが、悲観する必要はないでしょう。改善点があるということは、世の中からの期待に対し、応えられていないということであり、企業や働く人々にとって、まだまだ伸び代があるということです。そして、その伸び代がある限り、企業は成長を続けることができるといえるのです。
<コーポレートブランディングの事例:石坂産業株式会社>
プロジェクトの概要:
石坂産業株式会社の使命は「自然と共生する、つぎの暮らしをつくる」。里山づくりや環境教育、多様な国・企業・人との共創による技術開発と研究、エコプロダクツやオーガニック商品、そして室礼による日々のおもてなしは、これからの地球に必要なライフスタイルをつくり、啓蒙していく取り組みです。
地球が枯渇するのではなく、地球が育まれる。豊かに暮らすことが、豊かな地球につながる。自然と共生する暮らしの素晴らしさを、一人ひとりに届け、世界中の文化として根づかせていくことを目指している企業です。企業の志を言語化、ビジュアル化するCIプロジェクト。そして、志を社内外に広めるプロジェクト、同志を集める採用プロジェクトです。
効果:
「減量化・再資源化率は95 → 98 %」「エネルギー創出のテスト開始」「オープンラボ構想に向けた行政への申請」など、掲げたビジョンやメンバーを巻き込みながら 着実に推進されている。様々な団体・企業とのコラボレーションが生まれ、国境を越えた提携も生まれている。会社・施設見学の来場者数か8000人から4万人に増加し、海外の大使など (40カ国以上)が環境・廃棄物処理を学びにきている。
▼プロジェクトの詳細は下記よりご覧ください
→ 『人と自然と技術が共生する社会へ』
4:まとめ
ここまでお読み頂きましてありがとございます。ブランディングの全体像ご理解いただけましたでしょうか。
最後に、大切なところだけ改めておさらいです。
まず、ブランディングの本質とは、
「企業や商品の存在意義を明確化し、その意義が生み出す提供価値を求めている人々に想起させること」にあります。
そして、ブランディングの原点となる企業の存在意義を明確に定めるには、コーポレート アイデンティティ(CI)を策定していく必要がありましたね。
CIはマインド アイデンティティ(企業理念)、ビヘイビア アイデンティティ(社員の行動)、ビジュアル アイデンティティ(ロゴやVI)からなっています。
さらにマインド アイデンティティ(企業理念)は、ミッション・ビジョン・バリュー・スピリット・スローガンという理念ワードに分解されます。
そして、いざCIが完成したら、それを起点にインナーブランディング(企業文化づくり)、商品・事業ブランディング(事業づくり)、採用・育成ブランディング(人・組織づくり)を行うことで、コーポレートブランディングを実現させていきます。
上記のようなステップを着実に踏んでいくことで、名実伴うブランディングされた企業への道は実現されると私たちは信じています。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。これらのコンテンツが、みなさまの企業やブランドのブランディングに少しでもお役に立てますと幸いです。
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